国立公文書館 企画展「書物を愛する人々」(5) 書物を愛する心・書物を守る①

公文書館・図書館
01 /10 2017
続いて「書物を守り伝える」というコーナー。
その中でもまずは「書物を愛する心」のケースから

淮南鴻烈解 307-0042
  『准南鴻烈(准南子ともいう)』という書物の解説書です。『准南鴻烈』 は、前漢時代の淮南王・劉安(紀元前179-紀元前122) が、お抱えの学者たちを総動員して編纂した書物で、儒学や道家などさまざまな思想が入 り交じっているのが特徴です。
 資料は、明の万暦9 年(1581) に刊行されたものです。江戸時代中
期の儒学者・松井羅州(1751-1822、雅号は耕読園)の旧蔵書で、表紙には大型の蔵書印が捺されています。そして、蔵書印に記された文章からは 「書物を愛する心」が読みとれます。昌平坂学問所の旧蔵書で、全6 冊です。

立派な読書人の心得(表紙の印)
「滌手焚香・払塵浄凡」 →手を良く洗い、香を焚き、机を綺麗にしなさい。
「勿捲脳・勿折角」 →書物を丸めてはならない、ページの端を折ってはならない。
「勿以爪侵字・勿以唾掲幅」 →爪で文字に印をつけてはならない、唾をつけた指でページを めくってはならない。
「勿以爽刺・勿以作枕」 →しおりを挟んだままにしてはならない、枕にしてはならない。


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羅山林先生集 (紅葉山文庫) 205-0127
羅山林先生集 (昌平坂学問所) 263-0058

江戸時代初期の儒学者、林羅山(1583-1657) の詩文集です。
資料は、どちらも、寛文2年(I 662)に刊行されたものですが、約350年の時を経て、その保存状態に違いがあらわれています。
 幕府の蔵書子である紅葉側文庫に献上されたものは「秘閣図/書之章」の印があります。紅葉山文庫の蔵書は閲覧する人も少なく、しっかりと管理されていたため、非常に良い状態を 保っています。
 昌平坂学問所が開設された際に移管された書物は、羅山の子孫が代々受け継いできたものです。始祖ともいえる林羅山の 文章を、その子孫や門弟たちが読んだのでしょう、ページの左端が人の皮脂などで黒く汚れています。この違いを目にすると、松井羅州の印記にある「手を洗う」ことの重要さがわかります。


紅葉山文庫
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昌平坂学問所
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書物を守る①(染紙・たばこの葉)のケースより。

大蔵目録 子194-0017
唐時代の僧侶・慧琳(768-820)が著した『一切経音義』全100巻の目録です。 「一切経」は「大蔵経」ともいわれ、漢訳された仏教経典を集大成したものです。資料は慶長18年(1613)に刊行されたもので、全3冊です。

「染紙」
 愛書家が一番恐れるものは、天変地異のように人の力ではどうしようも ないものより、少し注意すれば防げるにもかかわらず、ちょっと油断する と、たちまち本を消滅させてしまいかねない虫の被害です。
 そこで、『大蔵目録』のように、防虫・防腐の効果があるとわれる「黄葉 (ミカン科の樹木の皮からとれる染料)」を染み込ませた紙を用いて、虫の被害から書物を守ろうとしたのです。



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黄帝内経素問 300-0144
中国の伝説上の帝王・黄帝とその臣下で名医と呼ばれた岐伯との問答を記録したといわれるもので、最古の医学書といわれています。
資料は、明時代(1368-1644)に刊行されたもので、全8冊です。「たばこの葉」の形をした蔵書印が捺されているのが特徴ですが、この蔵書印の詳細は不明です。

「たばこの葉」
「たばこの葉」には、そのニオイから防虫効果があるといわれています。そこで、愛書家は「たばこの葉」を書物に挟むことによって、虫の被害を防ごうとました。 『黄帝内経素問』に捺された「たぱこの葉」の印にも、実際の「たばこの葉」のような効果を願ったのでしょうか。


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